ゆびかわブログ

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【読んだ】統計学入門(基礎統計学I)

 

東京大学出版会統計学入門を読んだのでその感想を書きます。

 

統計学入門 (基礎統計学?)

統計学入門 (基礎統計学?)

 

読んだ背景 

最近の僕個人の興味と、仕事での緩いミッションとの絡みで統計学を勉強していて、この本の評判が良いことを知って購入しました。

 

全体の雑感 

評判どおりの良書で、この本のおかげで非常に助かりました。

僕は一応大学で数学を勉強してたことになってますが、専攻が違うのと、もの凄くロクデナシな学生だったのもあって確率統計についての知識はほぼ完全にゼロでしたが、これを読んで基礎的な事項をスッキリ腹落ちして理解できたと思います。

この本を読む前に、統計学について色々と下手なツマミ食いのように情報収集をしていたのですが、どれもなんだか分かるような分からないような悶々とした感覚を抱いていおり、最初にまずコレに手を出せばよかったという思いです。

 

予備知識は不要か?

まえがきには、”文科と理科両方の学生のために、統計的なものの考え方の基礎をやさしく解説する…”とあり、まるで全くの予備知識ゼロで特攻しても差し支えないかのように書いてあります。

確かに、”統計学についての予備知識”という意味では不要でしょう。実際僕はそうでして、期待値、分散、確率変数、標本、検定…といった語を知らなくても、本文でわかりやすく解説されています。

がしかし、数式に全く不慣れだとか、数学的な考え方に全く馴染んでいないという場合には、正直キツいだろうな…と感じました。著者は、「数式が分からなくとも、それに拘らず図や表をみてざっと大局をつかむこともできる…」というようなことを書いていますが、おそらくそれでもかなりの努力と忍耐が必要になるでしょう。

例えば、極限の概念への理解がある程度ないと、大数の法則中心極限定理はかなりあやふやな理解になるでしょう。また、確率変数の変換の理解には、基本的な微積分の知識がないと何言ってるかサッパリだと思います。そして、これらの理解が不十分だと、本書で最も重要と思われる標本分布・推定・仮説検定の理解が十分ゆきとどきません。こういった基礎知識が足りないと自信を持って言えてしまう人は、入門する前に門前払いを喰らう可能性があるので、先にその準備をしたほうがよいでしょう。

 

ではどういう予備知識が必要かというと、完全に個人的な見解ですが、大学理系学部の教養程度の数学をうすらぼんやりでも覚えていれば良いかなと思います。具体的には、

・集合と写像のごくごく基本的な知識

・高校生レベルの数式の操作、初等関数の知識

・大学1年レベルの解析のさわり 

あたりでしょうか。理系大学を卒業している人であれば問題ないと思います。

こんなこと書くと怒られそうですが、最悪重積分とかの具体的な計算はできなくても、それが数学的に何を表現しているのかや、変数変換の時にヤコビアンとか出てきたな〜程度のことを覚えていれば、読みながら思い出せるので良いと思います。

 

その他

数式はたくさん出てきますが、厳密に詰め切っているかというとあまりそうではないです。定義の記述が不明確な語も多くあったし、飛躍してたり、結構重要そうな主張の証明がごっそりなかったりします。

多分、直感的なわかりやすさを重視してあえてそうしているのでしょう。こういったことについては、人によってずいぶん意見が分かれると思いますが、僕としてはこのスタイルで良いと思っています。初学者向けだし、あまりゴリゴリやっていると色々見失いがちになるし、飛んでる所を詳細に知りたい時は脇道に逸れて調べればいいし(おかげで時間かかったけど…)。

 

まとめ

冒頭の繰り返しですがとても良い読書体験でした。ゼロから始める統計学への最良の道しるべとしてオススメの一冊です。